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業務効率化読了 約11分

AI導入の進め方|業務選びから検証・展開までの実践ガイド

AI導入は、ツール選びより先に業務課題を定めることが重要です。頻度・手戻り・判断の難しさから候補を比べ、小さく試して検証し、継続・修正・展開を判断する進め方を解説します。

こんにちは、平岡です。AI導入で最初に決めるのは、使うツールではなく、どの業務の何を変えたいのかです。業務課題を言葉にし、頻度・手戻り・判断の難しさで候補を比べ、対象と利用者を絞って試します。導入前に決めた項目で効果を確かめてから、継続・修正・展開を判断するのが基本の流れです。

弊社では、AI導入を「業務課題の特定」「候補業務の比較」「AIと人の役割分担」「小規模な試行」「検証と展開判断」の順に進めます。まずは候補業務を洗い出し、頻度・手戻り・判断の難しさを比べるところから始めましょう。

AI導入の目的を業務課題から定める

AI導入の出発点

「AIを使う」だけでは、導入後に何をもって成功とするか決まりません。先に、時間がかかる、同じ内容を何度も入力する、確認後に差し戻しが発生するといった業務上の困りごとを特定します。

たとえば営業事務の見積依頼なら、依頼内容の転記に時間がかかるのか、必要情報の不足で確認のやり取りが増えるのかを分けて考えます。「見積業務を効率化する」ではなく、「依頼内容を整理して確認項目の抜けを見つけ、担当者が見積作成に進める状態にする」のように、変えたい状態を具体化します。

業務の現状を把握する際は、担当部署、作業の開始から完了までの流れ、使う書類やデータ、確認者を並べます。作業時間や差し戻しの有無など、導入前に記録できる項目を決めておくと、後の比較に使えます。

目的の決め方

「AIを導入する」ではなく「どの業務の、どの状態を変えるか」を記述します。作業時間・差し戻し・確認の手間など、導入前後で比べられる項目もあわせて選びます。

候補業務を洗い出し、比較する

業務候補の比べ方

候補を探すときは、経営者や情報システム担当だけで決めず、営業、総務、製造など、実際に作業する担当者から業務を挙げてもらいます。部門ごとに、作業の頻度、やり直しの多さ、判断の難しさを比べると、試す業務を絞り込みやすくなります。

初期比較の方法として、各項目を1〜3点で仮採点するやり方があります。点数だけで決めるのではなく、作業ルールが決まっているか、参照できるデータがあるか、間違った場合に顧客や品質へどの程度影響するかも確認します。

業務名:
担当部署・利用者:
頻度(1〜3):
手戻り(1〜3):
判断の難しさ(1〜3):
使えるルール・データ:
誤りが起きた場合の影響:
導入前に記録する項目:

中小企業庁の2022年版中小企業白書には、年間約7万件、約30年分の図面データとAIを使い、施工図作成を従来の約2日から約1時間30分に短縮した事例が掲載されています。データを蓄積・参照できる業務が候補になり得る例ですが、同じ効果が自社でも得られると決まったわけではありません。まず、自社にどの程度のデータがあり、業務で使える状態かを見ます。

技能継承を課題にする場合も、候補業務を具体化できます。中小企業庁の2025年版中小企業白書によると、従業員8名のタヤマスタジオ株式会社は、南部鉄器製造の技能継承・人材育成にAIを活用しています。自社では、熟練者の判断が必要な作業や、教育時に繰り返し説明する内容を候補として書き出せます。

AIに任せる範囲を決める

AIと人の役割分担

候補業務が決まったら、AIが行う作業と、人が確認・判断する作業を分けます。情報の分類、要点の整理、文書の下書きなどをAIに任せ、顧客への回答や品質に関わる判断は担当者が行う、といった役割分担が考えられます。

個人情報保護委員会は、生成AIの回答に不正確な内容が含まれることがあると注意喚起しています。出力をそのまま社外に送る運用ではなく、根拠となる資料との照合や、確認者を決める工程を入れます。

中小企業庁の2025年資料には、従業員33名のオプトサイエンスが、海外論文・英語マニュアルを調べて技術解説文書を作る業務や、広告制作に生成AIを活用した事例が掲載されています。調査や文書作成のように、AIの出力を人が確かめて仕上げる業務は、役割分担を具体化しやすい例です。

判断をAIに委ねるか迷ったら、誤りが起きたときの影響で線を引きます。社内向けの案づくりなら担当者の確認後に利用する、顧客への回答や重要な処理ならAIは情報整理まで、といった形で、承認者と最終判断者を業務手順に明記します。

出力の扱いに注意

生成AIの回答には不正確な内容が含まれる場合があります。事実確認が必要な文書や顧客対応では、担当者が根拠資料と照合してから利用する運用にします。

小さく試す業務を選ぶ

試行業務の選び方

最初の試行では、対象業務、利用者、扱うデータを限定します。たとえば営業部全体の提案書作成を一度に変えるのではなく、特定の種類の提案書を担当する数名で下書き作成を試す、といった切り方です。利用者が少なければ、どの工程で時間がかかったか、どの出力を直したかを聞き取りやすくなります。

試す前に、現在の作業時間や差し戻しの有無、作成物の確認にかかる手間など、比較する項目を決めます。IPAの「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」は、業務効率化の評価方法として、導入前後の残業時間の推移や利用者アンケートを挙げています。時間だけでなく、使う人が業務に取り入れられたかも確かめる設計です。

試行期間中は、実際に使った場面、修正した内容、利用を見送った理由を記録します。たとえば、定型的な社内文書の下書きには使えたが、参照資料が不足する案件では確認に時間がかかった、という記録があれば、対象を絞るか、参照情報を整えるかを検討できます。

試行前に決めること

対象業務・利用者・入力するデータを限定します。導入前の作業時間や手戻りなど、試行後に同じ条件で比較できる項目を先に記録します。

業務に合うAIツールを選ぶ

選定時の確認点

ツール選定では、必要な機能だけでなく、入力するデータの扱い、既存業務とのつながり、管理者が運用する負担も比べます。社内文書の下書きが目的なら、担当者が現在の作業のどこで利用するのか、出力をどこへ転記するのかまで確かめます。既存サービスの利用で足りるのか、個別の仕組みが必要なのかも、試行で得た業務要件をもとに判断します。

中小企業庁の2025年資料によると、従業員85名の岡田研磨株式会社は、生成AIとの対話で自社の情報統合管理システムを開発し、品質・生産・労務管理など30以上のアプリを搭載しました。これは個別開発を含む活用例です。自社でも開発を前提にせず、既存ツールで不足する機能や、保守を担う担当者がいるかを先に洗い出します。

選定時には、利用者のアカウント管理、データの持ち出しや削除の扱い、既存の書類・システムとの受け渡し、問い合わせ先も検討対象です。機能が多くても、現場が毎回別の画面へ転記する必要があれば、運用が定着するかは別に検証しなければなりません。

生成AI導入前にルールと体制を整える

利用前に整えること

生成AIを使い始める前に、入力してよい情報、出力の確認方法、問題が起きたときの連絡先を決めます。たとえば営業部門では、顧客名や個人情報を含む相談内容を入力できるか、回答文を誰が確認するかを業務ごとに明記します。利用部門だけに任せず、管理側の窓口と相談手順も用意します。

個人情報保護委員会は、生成AIへの個人データ入力について、応答出力以外の目的で扱われる場合に個人情報保護法違反となる可能性を示し、機械学習に利用しないこと等の確認を求めています。入力情報の範囲を決める際は、利用するサービスのデータの扱いを確認し、判断がつかない情報は入力しないルールにします。

OpenAIは、ChatGPT Business、Enterprise、EduおよびAPIの入力・出力を、デフォルトではモデルの学習・改善に使用しないと説明しています。ただし、これは対象となるサービスの説明であり、どのサービスにも当てはまるわけではありません。契約するサービスのプランとデータ設定を確認せず、機密情報や個人データを入力する運用は避けます。

社内ルールには、入力禁止の情報、出力を人が確認する業務、誤りや情報漏えいが疑われる場合の連絡先を記載します。経済産業省・総務省は2026年3月31日、「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」の本編、チェックリスト、ワークシートを公開しました。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版も、中小企業向けに情報セキュリティ対策の考え方と段階的な実施方法を示しています。自社の利用ルールや管理体制を整える際の参照材料になります。

入力してよい情報:公開情報、個人情報を含まない社内情報
入力しない情報:顧客の個人データ、未公開の機密情報
出力の確認者:業務担当者または承認者
問題発生時の連絡先:利用部門の責任者、管理担当者

検証結果から継続・修正・展開を判断する

検証後の判断

試行が終わったら、導入前に決めた項目を使って結果を比べます。作業時間が短くなったかだけでなく、差し戻しや修正が増えていないか、利用者が使い続けられたかも見ます。IPAが評価方法として挙げる導入前後の残業時間の推移や利用者アンケートも、作業負担と現場の受け止めを把握する材料です。

結果に応じて、継続・修正・中止を選びます。時間短縮が見られても確認作業が増えたなら、対象業務や入力する情報を見直します。効果が確認できない場合は、すぐに利用者を増やすのではなく、業務の選定や運用手順に原因がないかを切り分けます。

他の部署へ広げるときは、最初の試行と同じ条件で使えるかを確かめます。参照するデータや判断者が異なる業務は、別の試行として扱うほうが安全です。対象業務、入力可能な情報、出力の確認者、検証項目をセットで記録し、展開先ごとに調整します。

展開の判断基準

導入前に決めた時間・品質・手戻り・利用状況を比較します。結果が不十分なら対象や手順を修正し、別の業務へ広げる場合はデータや判断者の違いを再確認します。

まとめ

AI導入は、業務課題を定め、候補業務を頻度・手戻り・判断の難しさで比べ、AIと人の役割を決めるところから始まります。対象を絞って試し、導入前後の作業時間や品質、利用状況を見て、継続・修正・展開を判断します。

まずは部門や担当者から業務を挙げてもらい、頻度・手戻り・判断の難しさを比べて、試行する候補を一つ選びましょう。

参考・出典

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株式会社meguli

AI×DXで、社会の巡りをよくする。中小企業の現場で使えるAI活用・業務改善の実践情報を発信しています。

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